災害救助犬、盲導犬、介助犬…「人のために働く」すべての犬に共通する1番大事な事①

現代ビジネスより

一般家庭の犬が災害救助犬に

災害現場で必死に捜索隊を呼ぶ災害救助犬。photo by istock

 要請を受け、被災地で災害救助活動を行う通称「救助犬」と呼ばれる犬たち。

警察犬、盲導犬に並ぶ難しい任務を請け負うが、資格を持つ犬の所属は様々だ。

警察犬が兼任するケース、日本レスキュー協会など各地のNPO法人に所属するケース。

だが、東京・中野の「日本救助犬協会」に登録される救助犬は、全頭が一般家庭のペットである。

希望する飼い主が協会の訓練を受け、1年に1回の資格認定試験に通ると「災害救助犬」と認定される。合格率は約1/4(日本救助犬協会の場合)という難しさだ。

 しかし合格した全頭が「災害救助犬」になるわけではない。

「災害救助犬」として救助活動の要請を受けるのは、協会に「登録」された犬だが、登録を希望する飼い主は少ないのだ。

救助活動は危険の多い被災地。交通費、滞在費は、協会からの自主的な補助があるとはいえ、訓練や救助活動にかかる費用は、飼い主のほぼ自己負担だ。

危険を伴う重要な任務でありながら、飼い主の負担があまりに大きい。

 高い志を持ちつつ、手弁当で活動しているのは、「日本救助犬協会」も同じである。

理由は、その成り立ちにある。

日本救助犬協会が設立された経緯について、協会のウェブサイトにはこうあった。

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NPO法人・日本救助犬協会の前身である日本災害救助犬協会は、1996年6月1日に設立されました。前年の1995年には、6,433名という多くの犠牲者を出した阪神淡路大震災が発生しました。

すぐに海外から、災害救助犬を使ったボランティアの救援部隊が駆けつけましたが、当時の日本ではまだ災害救助犬が広く認知されておらず、検疫という制度が壁となって、せっかく海外からやってきた救助犬たちは空港で足止めされ、救助活動が始まるまでに地震発生から3日という貴重な時間が過ぎてしまいました。

そのときの教訓と「日本にもし災害救助犬がいてすぐに駆けつけることができたら、もっとたくさんの命を救えたにちがいない」との思いから、ボランティアの手で多くの災害救助犬を育て、災害時の救助活動に貢献するために当協会が設立されました。

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 人命救助には、「72時間の壁」というタイムリミットがある。人間が水を飲まずに生きられる限界の日数と、1995年に起きた阪神淡路大震災の時の生存率のデータから出されたものだ。被災者の救出を担った消防のデータによれば、救出者における生存者の占める割合は日を追って低くなる。

この教訓を胸に、数人の有志が立ち上げたのが、「日本救助犬協会」だ。

 前編「『飼い主の命令に絶対服従』では? 救助犬が災害現場で『命令に従わない』時の理由」では、ごく普通に飼われているペット犬が、難しい任務を与えられる「救助犬」になるために必要な特性について動物行動学の高倉はるか先生にご説明いただいた。

 後編では災害救助犬だけでない、警察犬、盲導犬、介助犬、セラピー犬など、「人のために働く」犬に共通する一番大事な資質が何か、はるか先生にお伝えいただく。

つづく

NPO法人 補助犬とくしま

特定非営利活動法人(NPO法人)補助犬とくしまは、徳島県の身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)の育成と普及啓発を促進する事業を行い、障がい者福祉の向上のための活動を行なっています。

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