国内わずか70頭…介助犬に理解を 広がる企業支援「存在を伝えていく必要がある」

産経新聞 知っ得Newsより転載

手足が不自由な人の暮らしを助ける「介助犬」。身体障害者の自立と社会参加を促進する「身体障害者補助犬法」で補助犬と認められ20年がたつが、国内で稼働する介助犬は約70頭と少なく認知度もまだまだだ。介助犬の育成、普及に努める日本介助犬協会(本部・横浜市港北区)は「介助犬への理解を深めることは、バリアフリー社会の実現にもつながる」と強調する。協会の活動を支えようと、企業や団体からの支援も広がっている。

1頭育成に約250万円

「次は、靴と靴下を脱がせてもらいます」

同協会広報グループの後藤優花さんが、協会のPR犬、ファンタ(雄、5歳)に、自身の足の先を指し示す。ファンタは口で器用に引っ張って、最初に靴を、次に靴下を脱がせた。


「障害の状態によって、どういうふうに脱がせるかは変わります。介助犬も、靴と靴下で引っ張る力加減を変えています」と後藤さん。ファンタは他にも、冷蔵庫からペットボトルを取ってきたり、落とした鍵や十円玉を拾ったり、どこかに置き忘れた携帯電話を捜してくわえて持ってきたりと、介助犬の仕事を次々と見せてくれる。

介助犬になるには、大きな音や人ごみを恐れない性格が必要だ。その上で、物を拾ったり捜してきたりする訓練をして、相性を見極めた上で障害者に無償貸与される。1頭を育てるのに250万~300万円ほどが必要とされる。

病院や児相でも活躍

ただ、犬を訓練する以上に大変なのは、社会の理解を広げることだという。

法により、飲食店や宿泊施設は補助犬の同伴を拒むことはできない。同協会の高栁友子専務理事は「介助犬をどうやって受け入れればよいか、施設側から問い合わせはあるが、階段でしか移動できない場所にはそもそも車いすの障害者は行くことができない。介助犬について理解することは、障害者への理解を深めることと同義だ」と話す。

当事者の意識改革も必要だ。他人に声をかけることをためらう日本では、障害者が困っていても手を差し伸べる人が少ない。そうした経験が障害者から外に出る意欲を奪ってしまい、介助犬を持ちたいという意欲もそいでしまう。

高栁さんは、介助犬を持ったことで外出を楽しむようになった障害者を多く見てきた。犬が持つ力を利用して、協会は児童相談所で子供の心を癒やす「付添(つきそい)犬」や病院で患者に寄り添う「DI犬」など、現行の法律の補助犬の枠に入らないサポートドッグの育成にも力を入れる。「犬は人間を前向きに変えてくれる力を持っている」と高栁さんは胸を張る。

育成にはお金と時間

介助犬の普及や理解促進に協力する企業や個人も増えている。

不動産デベロッパー「ヒューリック」(東京都中央区)は5月から、社会貢献活動の一つとして日本介助犬協会の支援を始めた。同社の成瀬麻弓理事は「育成にはお金と時間がかかると知り、世の中に介助犬の存在をもっと伝えていく必要があると思った」と支援を決めた理由を説明する。

金銭的な支援にとどまらず、社員に介助犬のデモンストレーションを見てもらうなどして、身近なところから介助犬への理解を広げていく計画だ。

NPO法人 補助犬とくしま

特定非営利活動法人(NPO法人)補助犬とくしまは、徳島県の身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)の育成と普及啓発を促進する事業を行い、障がい者福祉の向上のための活動を行なっています。

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