コロナ禍の盲導犬ユーザー「困りごと」

日本盲導犬協会で、2021年3月 協会の盲導犬ユーザー227人を対象に聞き取り調査を行なわれました。私たちは何をサポートしたらよいのかわかりやすいデータですので転載させていただきました。

以下、日本盲導犬協会ホームページより転載

コロナ禍の盲導犬ユーザー

外出時や社会参加での「困りごと」聞き取り調査報告

~「消毒液の置き場所や人との間隔が分からない」周囲の声かけが必要です

1 .外出時の不安、困りごと 1 位は「ソーシャルディスタンスが分かりづらい」

コロナ禍での外出時の困りごとを尋ねた(選択肢 8 つの複数回答可)ところ、「ソーシ ャルディスタンスが分かりづらい」(41%)が突出して多く、次いで「周囲に手引きなど のサポートを頼みづらい」(22%)、「商品などを触るため周囲の目が気になる」(21%)、 「同行援護依頼回数が減った」(20%)、「声かけや周囲のサポートが減った」(18%)が続 きました。また、「犬の感染を理由に拒否に遭うのではと不安」(12%)もありました。

この設問でのコメントを抜粋してみました。 

・「消毒液の置き場所が分からない」

 ・「スーパーのレジに並ぶのに距離感や進み具合が分からなくて困った」が複数件

・「病院の待合室でソファの間隔を空けるのが難しい」

 ・「店で機械での支払いが増えてきてサポートを受けるまでに時間がかかる」 

・「飛沫防御シートで声が聞きづらい、距離がわかりにくい」 

・「物に触ることが不安」

目が見えない、見えにくい人にとって、音声情報や触覚情報は日常生活に欠かせません。 感染防止のため店頭で手指消毒が求められ、カード決済など非接触型の生活が推奨されても、実行するには周囲の手助けが必要です。スーパーのレジで人との間隔を取るにも、周囲 からの情報がないとわかりません。データからも、コロナ禍において視覚障害の方は、「声 かけ」や「サポート」を必要としていることが改めて示されています。

こんな声もありました。「盲導犬ユーザーとして外出していることに何か文句を言われな いか、不安だ」。見えない、見えにくい方にこのような思いをさせない、そんな社会を目指 したいと考えます。

2.コロナを理由に盲導犬受け入れやサポートを断られる

外出時の不安を尋ねた質問で、「犬の感染を理由に拒否に遭うのではと不安」が 12%あ りましたが、実際はどうだったでしょうか。「コロナ感染を理由に、店や施設でサポートを 断られたり、入店を拒否されたりしたことがあるか」を聞くと、14 人(6%)が「ある」と答えました。

具体的にはどうだったのでしょうか、コメント欄からみてみます。 

・「いつも宿泊しているホテルなのにコロナだからと断られた」 

・「犬から人間に(コロナウイルスが)うつる」「こんなご時世なので...」と犬を敬遠する事例。 

・「デパートの地下で買い物をしようと、いつも通りの誘導を依頼したら、『感染症対策のた

めにできない』と受付の方から断られた」 

・「スーパーで以前はいつ行っても介助してもらえたが、6 月ごろから『スタッフが少ない

から事前に連絡して』と言われ、さらに『その日、その時間帯は無理』と自由に利用でき なくなった」など今までどおりのサポートが受けられなかった事例がありました。

「コロナ禍でサポートを人に頼みづらい」。なので「家族にお願いしている」「サポートが 必要な場所には行かないようにしている」という声もありました。盲導犬と単身で自由に外 出できるはずなのに、出先で人のサポートを得られるか心配なので断念せざるを得ない。以 前にも増して、コロナ禍で視覚障害の方が不自由を強いられている現状が浮かび上がって きました。

視覚障害の方が委縮せずに必要な時にサポート依頼ができるよう、社会全体で考えてい かなければなりません。

3.受け入れ拒否が減った~外出が少なかったから

1過去 1 年間(2020 年 1 月から)に盲導犬同伴を理由とした「受け入れ拒否」があった かどうか聞いたところ、93 人(41%)が「ある」と回答していました。

この質問は、障害者差別解消法の社会への定着度をみるため、施行(16 年 4 月)の 1 年 後から始めました。振り返ると 55%(17 年)→59%(18 年)→60%(19 年)→63%(20 年)と漸増してきましたが、今回は 41%に急減しました。

下がったのはコロナ禍でユーザーの外出頻度が減った(調査結果後述)という一時的要因 が大きいと推察されます。「コロナ禍なので断られそうなところに行かない」「病院への付き そいでは犬を置いていくことにした」など、受け入れ拒否を避けるための行動を余儀なくさ れていたこともあったようです。

この調査ではユーザーの外出頻度を聞き、集計していますので、「受け入れ拒否」の減少 に関連して紹介しておきます。

■外出日数減少

例年、ユーザーに外出頻度を尋ねますが、コロナで緊急事態宣言が出るなど社会全体に外 出自粛が求められたこともあって、いつもと比べると今年は「出控え」がうかがえました。 外出頻度は 2015 年以降、「毎日」と答える人は 62~70%の間で推移していましたが、今 回は前年の 62%から 52%へと 10 ポイント下がりました。「できるだけ外出しない」とする

コメントも多数ありました。

■盲導犬との歩行時間も減少

では、1 日に盲導犬と歩いている時間はどのように変わったでしょうか。例年、「30 分~

60 分」と「1 時間~2 時間」とで合わせて 80%ほどになりますが、前年と比べると「1 時間 ~2 時間」が 40%から 30%へと 10 ポイント下がりました。代わって「30 分~60 分」が 46%から 53%へと増えました。当然ですが、「外出日数」の結果と軌を一にしています。

2拒否に遭った場所は、飲食店が 74%(前年 78%)と抜きんでて多く、医療機関 22% (同 24%)、スーパーやコンビニエンスストアなど小売店が 16%(同 15%)、タクシーやバ スなどの交通機関が 14%(同 24%)と続きました。カラオケなどの娯楽施設は 2%(同 9%) でした(複数回答可)。

3拒否の理由は「犬は駄目」が 60%(前年 59%)と突出していました。「犬は店の外で待 たせるなどの条件をつけられた」が 34%(同 37%)、「犬アレルギーや犬嫌いの利用客がい るから」が 32%(同 42%)の順になり、「受け入れの前例がない」が 22%(同 36%)あり ました(複数回答可)。

非接触、非対面が進む社会で、視覚障害の方はサポートを必要としています

NPO法人 補助犬とくしま

特定非営利活動法人(NPO法人)補助犬とくしまは、徳島県の身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)の育成と普及啓発を促進する事業を行い、障がい者福祉の向上のための活動を行なっています。

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