自閉症の少年と相棒の介助犬「トパーズ」の絆が灯す希望の光

障害に伴う少年の攻撃行動の激化に戸惑う家族が探った解決策、、、。困難を乗り越えて、介助犬を迎え入れたことで本人と家族の人生が変わり始める

NEWS WEEKより転載

米ペンシルベニア州西部の町シェロクタに住むクラウザー一家にとって、メスのゴールデンレトリバー、トパーズとの出会いは「人生が変わる体験」だった。


3歳のトパーズは「最愛の相手」である9歳の少年チェイス、母親のアシュリーと父親のジャスティン、5歳の弟コナーと一緒に暮らしている。

チェイスは自閉症とADHD(注意欠陥・多動性障害)で、トパーズはチェイスの手助けをするよう訓練された介助犬だ。

「チェイスのことが大好き。こんなに愛情深い犬は見たことがない」と、アシュリーは本誌に語った。

それまで「ごく普通」だった一家の生活は、新型コロナ対策の封鎖措置が広がった2020年に一変した。

チェイスが「ひどく攻撃的」になり、何をしても落ち着かせることができなくなった。

本人や家族を傷つけないよう体の自由を奪うしかなくなったと、アシュリーは振り返る。

「チェイスにとって、混乱した世界に対処する唯一の方法が攻撃的になることだった。20年6月には実につらい決断をする羽目になり、治療のために精神科に入院させた。

退院後は多少は改善したが、これがわが家の『ニューノーマル』だと気付いて怖かった」

自閉症児支援の「マニュアルはゼロ」で、打つ手がない状態だったという。

助けを求めたフェイスブックで友人から教えられたのが、障害のある児童や退役軍人に補助犬を提供するNPO「4ポーズ・フォー・アビリティー(能力を支える4本の足)」だ。

オハイオ州ジーニアを拠点とする同団体は1998年に設立された。

以来、補助犬計1800頭以上を育成・訓練していると、広報担当者のケイリン・クラークは電子メールで本誌に説明した。

「とにかくチェイスを刺激しないようにする。それが生活の中心になっていた」と、アシュリーは話す。

「何かが起きたらとか、誰かがけがをするのではないかと心配することなく、家族らしく一緒に行動するためには、介助犬を見つけることが重要だった」

トパーズを迎え入れるまでの道のりは「長かった」という。

特に問題だったのが、希望者リストへの登録費用だけで1万7000ドルもの大金が必要だったことだ。だが、家族や地域住民の「素晴らしいネットワーク」や募金活動、地元紙の協力のおかげで目標額を用意できた。

オハイオ州に犬を迎えに行き、共にトレーニングをしてから連れて帰るための費用も必要だった。

全ての準備が整ったのは昨年3月。その2カ月後、一家はチェイスにとっての「ヒーロー」、トパーズに会うために「わくわくしながら」ジーニアへ向かった。

介助犬が学校生活を全力で支える

最大の難関はその後に待っていた。

チェイスが通う学校に、トパーズを受け入れてもらうことだ。

学校に介助犬を同伴する許可を求めて、夫妻はトパーズを連れ帰った直後から活動を始めた。

「特別なニーズのある子の親として、必要な知識を得るには予想もできないほど時間がかかる」と、アシュリーは言う。

「トパーズに関して、学校を含むあらゆる場所でチェイスにどんな権利があるかを知るため、ADA(障害のあるアメリカ人法)を調べ尽くした。簡単に越えられるハードルではなかったが、息子の学業的成功に不可欠なことだった」

電子メールや電話でのやりとり、弁護士との相談を重ね、地元学区当局者と話し合った末に、許可を得たのは昨年7月だ。

チェイスがより自主的に犬をコントロールする方法を身に付けられるよう、学区側が「ファシリテーター」を提供することも決まった。

「関係者全員にとって未知の体験だったが、うれしいことにほとんど問題はなかった。チェイスが自分の感情とうまく付き合いながら適切な教育を受けられるよう、トパーズは学校生活を全力で支えている」と、アシュリーは話す。

トパーズがいる今では、チェイスの体の自由を奪わなければならない事態はずっと少なくなった。

「チェイスがいら立ったときも、トパーズならどんな方法より素早く静められる。私たちの生活はいい方向へ変化している。簡単な道のりだったとは言えないが、それだけのことはあった」

【動揺を感じ取る能力も】

4ポーズで誕生したトパーズは、同団体が「子犬の幼稚園」と呼ぶパピー・エンリッチメントプログラム(PEP)に早いうちから加わった。

「卒園」後はまず基本的なしつけを受け、公共空間に慣れるトレーニングをした。

広報担当者のクラークによれば、将来的に支える相手の生活様式や特定の障害を見据えて、補助犬は子犬のときから2年間の「厳しい」訓練を受ける。

「トパーズは本当に素晴らしい。チェイスが動揺し始めたのを感じ取ることもできる。そんなときはそばへ走っていって、私たちの指示を待ちながら、チェイスの周りを回ったり軽くつついたりする」と、アシュリーは言う。

「息子と私たち家族の人生が変わる機会に恵まれて、とても幸運だ。4ポーズには感謝してもしきれない。チェイスはトパーズを心から愛していて、トパーズ抜きの外出は許してくれない。たった5分間、家を離れるだけでも」


NPO法人 補助犬とくしま

特定非営利活動法人(NPO法人)補助犬とくしまは、徳島県の身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)の育成と普及啓発を促進する事業を行い、障がい者福祉の向上のための活動を行なっています。

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