知られざる「補助犬用トイレ」の現状 ③

室内型専用トイレの使い勝手は?

実際にこの目で国内の事例を見ておこうと、先日、知人のアイメイト使用者と一緒にJRさいたま新都心駅構内の補助犬用トイレを訪ねた。東京五輪よりも早く、2019年に設置された先駆的施設。改札内のコンコースの一角に、2つの多機能トイレと併設されている。ボタン式の自動ドアを開けて中に入ると、多機能トイレのような広い床面があり、正面の壁沿いに汚物流し台と手洗い場があった。犬の排泄スペースは、一段高くなった2mx0.5m程度のステンレス製の台。中央に排水溝があり、水を流せるシャワーがついている。ここに犬を乗せて排便させ、尿は係員が定期的にシャワーで流し、便は使用者が拾って汚物流し台にその場で流すスタイルだ。

ただ、アイメイト(盲導犬)の場合は前述のように、使用者の周囲を何周か回らせて排便を促す。この一段高くなった狭い排便台ではそれができない。車椅子ユーザーでもある介助犬使用者の利便性を考えて流し台形式にしたようだが、盲導犬使用者のほとんどはここを使わずに床面にペットシーツを敷いて利用しているとのこと。つまり、その場合使い勝手は多機能トイレとあまり変わらない。

同行したアイメイト使用者は、ふだんは郊外の一軒家の裏庭でさせており、ペットシーツでの排泄の訓練はほとんどしていない。試しに排泄台の上に乗せてみたが、「ワン・ツー」の指示を出しても怪訝そうに中央に座り込んでしまうばかり。床におろしてペットシーツを敷いて周囲を回らせてみても、結果は同じだった。15分ほどチャレンジしたが、"屋外派"のこのアイメイトはついに排泄しなかった。

もちろん、使えるか使えないかは犬によって異なり、逆にここで気持ちよく排泄できる補助犬もいるだろう。JR東日本大宮支社によれば、さいたま新都心駅の補助犬用トイレの利用率は、駅員の印象では「月に1、2回程度」。ステンレス製の排泄台については、利用者からの「滑りやすく使いにくい」という指摘を受け、人工芝を敷く対応をしたとのことだ。


「違い」を認められる寛容さを

こうした補助犬用トイレの仕様の問題は今後も議論を重ねてブラッシュアップしていくべきだ。ただ、それ以前の問題として、「日本社会には補助犬に対する寛容さがまだまだ足りない」と、殿岡さんたちは公開研究会で訴えた。

朴さんは、海外の寛容さの一例として、オーストラリアでの経験を披露。盲導犬が道路脇の植え込みで排泄すると、通りがかかりの愛犬家が「私が拾っておきますよ」と申し出てくることがあったという。殿岡さんは「日本では、犬どころか子供ですら、公共の場で吐いてしまったりおもらしをしてしまったら、お母さんたちがとても恐縮して周りに頭を下げ回りながら自分で雑巾を持ってきて拭き取ったりします。訓練された盲導犬でも100%失敗しないわけではなく、緊張や体調不良もあります。そうしたことを受け止められる優しさ、おおらかな部分があったらもっと過ごしやすいと思います。それは、施設を整備して解決するものではありません」と、当事者としての感想を述べた。

補助犬用トイレの議論と整備はまだ始まったばかり。当事者や専門家でなくても、まずできることは、自分と異なる存在や価値観を受け入れ、尊重できる寛容さを持って社会に接することではないだろうか。

NPO法人 補助犬とくしま

特定非営利活動法人(NPO法人)補助犬とくしまは、徳島県の身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)の育成と普及啓発を促進する事業を行い、障がい者福祉の向上のための活動を行なっています。

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