夏真っ盛り!水難救助犬の基礎訓練を応用した水遊びをご紹介

BE-PALより転載

愛犬と水遊びにチャレンジ!でもその前に知っておきたい大切なこと

夏のお出かけは水遊びできる場所を選んで、ひんやりリフレッシュ!

暑さに弱い犬たちは、夏の間はお散歩できる時間帯も限られ、運動不足になりがちです。災害救助犬としてがんばるコアも暑さには弱く、日頃のお散歩や訓練は熱中症に気をつけて、いつもより時間を短くしています。それでも体力は落とさないように、クールダウンできる湖畔のトレイルを探してお散歩したり、陸からはアクセスできない中州や崖下の岸辺へ探検にカヤックで行ったりします。


近年しだいに長くなる暑い季節。犬も飼い主さんも一緒に水遊びしてリフレッシュできたらいいですね。今回は、災害救助犬のコアとハンドラーの私の体験を踏まえつつ、愛犬と夏を楽しむ水遊びを紹介します。

初めての水遊びでは、無理やり水に入れて、水が怖いと思ってしまわないよう、犬の様子を見ながら、徐々に馴らしてあげましょう。

例えば、飼い主さんがおもちゃで浅瀬に誘って、犬が自発的に水に足を着けられるようにしてみたり、水遊びが好きな犬のお友達と一緒に遊びに行くのも馴れるきっかけになります。

そんな初めての水遊びのときは、海や川よりも湖やドッグプールに行く方が安心です。ではまず、初めての水遊びを安全に楽しむためのポイントを挙げておきます。

水遊びを安全に楽しむための準備とは

◆ライフジャケット

ライフジャケットは、溺れるのを防ぐだけではなく、ケガや低体温症の予防にもなります。若い頃は必要なかったという犬でも、シニアになったら様子を見て着けてあげましょう。飼い主さん自身もライフジャケットを装着しておきましょう。

◆リード

リードは水に浮く視認性のよいものを選びましょう。なぜなら、浮かないリードは、水中の枝や水草だけでなく、犬の足にも絡まってしまう危険性があるからです。ちなみに私は、モンベルで購入した黄色いフローティングロープを使っています。また、安全のために、水遊びの時は首輪に着けるのではなく、ライフジャケットかハーネスにリードを着けたほうがいいでしょう。

◆おもちゃ

こちらも水によく浮き、視認性のよいものにしましょう。流されたおもちゃを犬が追いかけて溺れてしまったという事例もあるので、流れの速い場所におもちゃを投げないようにしましょう。おもちゃが流されないよう、ロングリードを着けてもよいかもしれません。

周囲に気を配る

犬と水遊びする前に、近くに人がいて迷惑にならないかなど、周囲に気を配ることも忘れずに。

水遊びで気をつけたい症状や生き物

◆水中毒

水遊びで繰り返しレトリーブ(投げたおもちゃなどを咥えて戻ってくる “モッテコイ遊び”)をしていると、いつの間にか水を大量に飲んでいて、血液中のナトリウム濃度が極端に低下することで水中毒を起こすことがあります。

体重1kgあたり1日100ml以上の水を摂取すると低ナトリウム血症を起こす危険性があります。犬の様子をよく観察し、休憩をさせながら遊ぶことが大事です。

水中毒は急速に進行し命にかかわることもあるので、犬に歯茎の色の変化やよだれ、ふらつきや痙攣などが見られたら、すぐに獣医を受診しましょう。

◆熱中症

水遊び中でも熱中症になります。気温や湿度、水温が高かったり、日差しが強い時などは無理して遊ばないよう気をつけましょう。

もしパンティング(ハァハァと浅い呼吸が続く)が収まらず、よだれ、体温の上昇、歯茎や舌の色の変化などが見られたときは、獣医を受診しましょう。

◆やけど

ビーチの砂や河原の石が熱くなっていないか、犬を歩かせる前に必ず飼い主さんが手で触れて確認を。手で触れてみて、熱いと感じたら歩かせるのはやめましょう。工事中の鉄板なども要注意です。

◆低体温症

長時間、冷たい水中にいると低体温症になることがあります。震えていたり、舌や歯茎の色が変化していたら身体が冷え過ぎています。そうなる前に、こまめに休憩させること、そしてタオルドライを心がけましょう。

◆アオコ

アオコとは湖や沼などで藻類が大量発生し、広範囲に広がって水面が緑や青になった状態のことです。アオコを形成する藍藻の一部は毒素を生産します。2019 年にアメリカで、アオコが発生している池で遊んでいた犬 3 頭 が亡くなってニュースになりました。衝撃的なニュースだったので、一緒に水遊びをしている犬仲間たちとも注意しなければ、と話したほどでした。

見た目では毒性のある藻かどうか判断が難しいので、水面が緑や青色になっている場所では、水遊びさせないようにしましょう。

◆流れや波

自然の川や海は天候や潮位等によって刻々と状況が変わります。流れの強い場所ではあっという間に流されてしまいます。犬を遊ばせる前に、岸から状況を観察するとともに、飼い主さんが入ってみて、川では流れが速い場所がないか、海ではリップカレント(離岸流:沖に向かう強い流れ)や波の大きさなどチェックを。

いつもより流れが速いなど、少しでも危険を感じる時は水に入るのをやめましょう。知らない場所では、地元の方に安全な場所を訊いてみるのがいいと思います。

コアとの水遊びでは、水難救助犬のトレーニングも取り入れています!

私はアメリカ在住時に毎朝サーフィンをしていました。そこで知り合ったライフセーバーから聞いた水難救助犬に興味を抱きました。日本に帰国してから、水難救助犬育成のための訓練を受けられる「日本ウォーターワーク協会」に入会。泳ぐのが大好きだった先代犬ルーキーと8年にわたって、トレーニングを重ねました。

その経験から、犬との水遊びに、水難救助犬のトレーニングを取り入れるのも良いのでは、と思うようになりました。ルールを決めて一緒に取り組むことで、人も犬も絆を深めながら、より楽しく安全に水遊びを楽しめるからです。

ここからは、実際にコアもやっている、水難救助犬のトレーニングを取り入れた水遊びを紹介します。まずその前に、水難救助犬について説明しましょう。

水難救助犬とは、海や川、湖など水辺で溺れている人、遭難している人を救助する犬です。コアのような災害救助犬ともっとも違うのは「犬が要救助者を捜すだけでなく、救助まで行う」というところです。

そんな水難救助犬で有名な犬種はニューファンドランド。カナダの漁師とともに暮らしてきた超大型犬で泳ぎが得意。指の間には水かきがあり、油分を含んだ被毛は撥水性が高いため、冷たい水温から身体を守ります。

水難救助犬は具体的に何をするの?

【捜索】

要救助者(溺れている人)を岸やボートの上から捜します。

【救命具を運ぶ】

浮き輪やロープ、ライフジャケットなどの救命具を咥えて要救助者や動力を失ったボートまで運び届けます。要救助者が複数いる場合はハンドラー(指導手)が指示した方から向かいます。

【要救助者を運ぶ】

要救助者に意識が無い場合は袖口など衣服を咥えて、要救助者に意識がある場合は咥えていった救命具を掴んでもらうか、犬の背中や腰につかまってもらい、岸まで泳いで戻ります。

【動力を失ったボートを運ぶ】

パドルが流されてしまったりして動力を失ったボートまでロープを運びます。ボートに乗っている人が受け取ったロープの端を咥え、泳いでボートを岸まで運びます

泳ぐのが大好きで得意なワンちゃんに。水難救助犬の訓練の一部にトライしてみては?

水難救助犬の作業の基本は水中でのレトリーブです。ここからは、泳ぐのが好きな犬なら比較的トライしやすい、水難救助犬の訓練課目をアレンジした3つのアクティビティを紹介します。

水難救助犬の訓練では犬はライフジャケットを着用せず、水深が深く、長い距離で行います。ですが、ここでは水遊びの提案として安全に楽しんでもらうために、人、犬ともにライフジャケットの着用を勧めます。

そして、人の腰くらいの水深で流れのない場所、犬に無理のない短めの距離で、安全に楽しみましょう。

その1

まずチャレンジしてみたいのが、飼い主が水に投げたおもちゃを取って持ってくる、水の中で行うレトリーブ。陸上ではできても、水中ではうまくいかない犬もいます。しっかりできるように飼い主も一緒に楽しみながら練習していきしょう。 川や海では流れの速い場所におもちゃを投げないようにしてください。

流れのない湖やドッグプールで行うことを推奨します。

その2

飼い主と犬は陸上に待機して、第三者におもちゃを持って水の中で立ってもらいます。キュー (合図)で犬が泳いでそのおもちゃを取りに行き、飼い主がいる岸まで泳いで戻ってきます。

これは水難救助犬の基本の動きになります。最初は飼い主が水に入り、明るくやさしく犬を呼んだり、おもちゃを振ったりして犬を誘い、馴れてきたら第三者のところに泳いで行けるようにしてみましょう。

その3

飼い主か第三者が水の中から犬を呼び、犬が来たら背中や腰につかまって、泳ぐ犬に曳いてもらい一緒に岸に戻ります。

最初はおもちゃを使って水中から犬を呼び、犬が泳いで来たら、おもちゃを咥えさせてから犬につかまり、曳いてもらいます。馴れないうちや小型犬の場合は、腰のあたりにそっと手を添えるだけにして、人は水中を歩いて一緒に岸に戻ります。

中、大型犬で泳ぐのも上手な犬なら、犬の様子を見ながら腰につかまってそのまま陸まで曳いてもらいます。途中で犬が大変そうになったら、犬に曳いてもらわずに手を添えるだけにするといいでしょう。

水難救助犬の基本的な動きを取り入れたこの水遊びは、泳ぐことができて、人間とコミュニケーションの取れる犬だったら、楽しんでできます。好き勝手に遊ぶよりもむしろ安全で、コミュニケーションも深まるし、運動にもなるのでおすすめです。

水遊びを愛犬が楽しく安全できるよう練習してみたい。または、水難救助犬に興味を持ってくださったなら、水難救助犬育成のトレーニングを受けてみるのはいかがでしょう。日本では現在、水難救助犬の実働はないようですが、私とルーキーは「日本ウォーターワーク協会」でトレーニングを続けたことで、より良い関係が築けたと思っています。

楽しく遊びながら、犬の可能性を広げられたらいいですね。愛犬が暑い夏も体力を落とさず、元気に過ごせるように、安全に水遊びを楽しんでください!

私が書きました!


救助犬ハンドラー かとう まさみ

子供の頃から動物とアウトドアが大好き。ロサンゼルスのアニマル・シェルターでボランティア・スタッフをしながら犬のことを学ぶ。コアとお互いに良いバディでありたいと日々奮闘中。

NPO法人 補助犬とくしま

特定非営利活動法人(NPO法人)補助犬とくしまは、徳島県の身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)の育成と普及啓発を促進する事業を行い、障がい者福祉の向上のための活動を行なっています。

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